真空技術資料
【 II 】真空フランジ種類と取扱い方法
2-1 JISフランジ
【規格表】VF固定―VG固定型
【規格表】VF固定―VG回転
■取扱い1(フランジ)
JISフランジの材質は主にステンレス(SUS304)を使用し、真空シールにはゴムのような弾性のあるOリングを使い材質には主にバイトン(フッ素系)を使用して真空シールを行います。何度も繰り返して使用できコスト面でも良く、高真空まで使用できるので多くの真空装置に使用されています。
★ベーキング温度 150℃Max
<取扱いの注意点>
- 各シール面はキズ付けないように未使用時は キャップやフィルムを使い保護します。
- ボルトなどには焼付け防止剤などを塗布するこ とでベーキング後のネジかじりを防止します。
- Oリング等は長期使用したものは変形凝固され るため、新品と交換をしてください。
■取扱い2(Oリング)
JISフランジはV番のOリングを使用します。(表1 フランジとOリングのサイズ)使用時はエタノールなどでOリングについたゴミや油を拭き取ります。
必要に応じて揮発性の低いシリコーングリスやフッ素合成グリスなどを薄く塗りますと安定したシール性を持たせることができます。
★ベーキング温度 150℃Max
■取扱い3(締め方)
- フランジの溝やOリングにゴミやキズが無いか確かめます。
- フランジを重ね合わせたらボルト・ナットで挟み込み図1のように対角線上の順番に締めます。
- 最後は緩みが無いように図2のように1周して締め付けます。(締め付けトルクは下表参照)
2-2 ISO‐KF・LFフランジ規格
■ISO-KF
【規格表】KFクランプフランジ
【形状図】KFクランプフランジ ※メーカーによって形状が変ります
■取扱い1(フランジ)(センターリング)
ISO-KFフランジはOリングがはめ込まれたセンターリングを挟み込み、ネジやボルトを使用せずクランプと言われる締め付け金具を使用してシールをします。工具を使用しないので簡単に取り付けられ繰り返し使用できます。低真空から高真空まで使用でき主に真空排気系に多く使われます。
★ベーキング温度 120℃Max
<取扱いの注意点>
- 各シール面はキズ付けないように未使用時はキャップやフィルムを使い保護します。
- クランプの蝶ネジ部にはグリスを塗布すると締め付けが容易になります。
- Oリング等は長期使用したものは変形凝固されるため、新品と交換をしてください。
■ISO-LF
【規格表】LFボルト固定フランジ
【規格表】LFクロークランプ固定フランジ
■取扱い1(フランジ)(センターリング)
ISO-LFフランジはOリングがはめ込まれたセンターリングを挟み込み、ボルトまたはクロークランプを用いてシールします。センターリング構造はインナーリングとアウターリングとOリングからなり、センターリング自体の組込みは容易です。締め込み量もセンターリングの厚みに制限されるためフランジ間の隙間を見ることで確認できます。
★ベーキング温度 150℃Max
<取扱いの注意点>
- 各シール面はキズ付けないように未使用時はキャップやフィルムを使い保護します。
- クランプの蝶ネジ部にはグリスを塗布すると締め付けが容易になります。
- Oリング等は長期使用したものは変形凝固されるため、新品と交換をしてください。
- フランジ間の隙間を均一にするため片締めにならないよう注意が必要です。。
2-3 ICFフランジ寸法表
【寸法表】FH/FH(FT)固定型
【寸法表】FH/RH回転型
■取扱い1(フランジ)
ICFフランジの材質は主にステンレス(SUS304)(SUS316)を使用し、フランジ面に尖った山を成形されたナイフエッジと言われるシール部に銅製のガスケットシール材を挟み込むことで真空シールを行ないます。
ICFフランジはオールメタル真空フランジとされて、シール性に優れることから超高真空や極高真空装置に使用されます。
ベーキング温度 500℃Max
<取扱いの注意点>
- 各シール面はキズ付けないように未使用時はキャップやフィルムを使い保護します。
- ボルトなどには焼付け防止剤などを塗布することでベーキング後のネジかじりを防止します。
- フランジの製造メーカーによってエッジ加工の寸法が若干異なることが有るのでガスケットを再利用するとエッジの食い込みがずれによりリークの原因となります。
■取扱い2(ガスケット)
ICFフランジ用標準シールガスケット(図1)は銅製で、4カ所のエッジ面と2カ所の側面を使ってシールします。 酸化防止腐食ガス用として表面にAuメッキやAgメッキされたシールガスケットもあります。
ICFフランジ用IPDシールガスケット(図2)はエッジを使わず2カ所の面と2カ所の側面を使ってシールします。 トルク管理することで4~5回程度繰り返し使用することが出来ます。
【標準シールガスケット】図1
<取扱いの注意点>
- 標準シールガスケットは基本的に繰り返しての使用が出来ません。
- 標準シールガスケットは酸化防止のため、使用直前に開封します。
- ガスケットの表面に深さ0.1㎜以上のキズがある場合にはリーク原因になるため使用できません。(特に中心に向っての縦キズには気を付けます)
- フランジ販売メーカーによっては若干エッジ寸法が異なるため、メーカに合ったガスケットを推奨します。
【IPDシールガスケット】
<取扱いの注意点>
- IPDシールガスケットは繰り返し使用できますがトルク管理が必要です。(1回の使用で締付トルク1N・m増し)
- フランジのエッジ外面にキズがある場合は使用出来ません。
- ベーキング後に増し締めを行えるように最低0.2㎜程度の隙間をフランジ面に持たせます。
- フランジ販売メーカーによっては若干エッジ寸法が異なるため、再使用のトルク管理には注意が必要です。
- IPDシールガスケットは標準シールガスケットよりも細いため曲がりやすいので保管には注意してください。
■取扱い3(締め方)
- フランジの溝やガスケットにゴミやキズが無いか確かめます。
- フランジを重ね合わせたらボルト・ナットで挟み込み図1のように対角線上の順番に締めます。
- 順番に締め終えたらトルクを増して対角線締めを繰り返します。(締め付けトルクはトルク表参照)
- 最後は緩みが無いように図2のように1周して締め付けます。(締め付けトルクはトルク表参照)
■真空技術資料一覧
【I】真空単位 【II】真空フランジ種類と取扱い方法 【III】真空部品材料と選定方法
【IV】リークチェック方法 【V】こうゆうことしたい時辞典 【VI】真空部品・機器トラブル解決辞典